令和4年4月「伝統的工芸品越後三条打刃物」検査委員会に参加して

 三条の「鍛冶の技」は国の「伝統的工芸品」に指定されている。現在全国で237品目が指定され織物、陶磁器、漆器、仏壇、和紙など多くのジャンルがあり、「越後三条打刃物」は金工品のジャンルに含まれる。経済産業省の指定を受けるには、江戸時代から続いてきた伝統的な製造工程、材料などについての情報を提出、審査、またその街でその産業が続いてきた理由などの歴史についても審査の対象となり膨大な資料の提出と証明が必要となる。越後三条鍛冶集団、三条商工会議所が中心となり平成21年4月に指定されるまで数年の準備期間と多くの方のご尽力で成し遂げられたとお聞きしている。

 越後三条鍛冶集団では定期的に三条でつくられる「越後三条打刃物」が伝統的工芸品としての基準を満たしているかを審査する検査委員会を開催している。そして、この検査に合格して初めて伝統的工芸品のマークを付けて販売することが可能となる。
 今回の申請者は平木鋏製作所の平孝行氏(伝統工芸士)が造る大久保鋏や池坊鋏など約200丁、三条製作所の水落良市氏(伝統工芸士)が造る切出小刀が約30丁提出された。
 これを検査する検査員として、同じく伝統的工芸品に指定されている「三条仏壇」の三条・燕・西蒲仏壇組合、関係性の強い三条金物卸商協同組合、三条商鐡組合からそれぞれ代表が1名、三条市役所の商工課、営業戦略室からそれぞれ1名、三条鍛冶集団の会長、また同団体の伝統工芸士4名、合計10名の検査員で今回は約230もの製品の全数検査を行った。
 とは言え、鍛冶の技術の上辺しか知らない私を含めた者にとってはすべてが素晴らしい鍛冶製品として見える。やはり本当の検査員は、それぞれ造る物は違うが同業の伝統工芸士の皆さんの目である。名人が造ったものを名人が審査する結構シビアな検査である。今回お二人の鍛冶製品の出来は素晴らしく、普段仕事には厳しい検査員の伝統工芸士4名の方も「良くできている」と口を揃えた。今回はめでたく全数検査を通り、その場で伝統的工芸品のタグが製品に取付けられたが、過去の検査では数点検査を通らないという事も私自身目にしてきた。他の産地の伝統的工芸品はわからないが、三条ではこういった検査に真面目に取り組んでいる事に鍛冶製品を扱う我々金物卸も販売に注力してお応えしたいと思う。

 この検査の検査員になれるのは組合理事長の特権である。私は今回の検査委員会が最後となり、今後は山谷新理事長がこの会に参加する事になる。鍛冶集団の方々と一層交流を深め、ご自身のビジネスに活かして欲しいと思う。また願わくば他の組合員へも良い影響が波及するよう私も山谷新理事長をお支えしたいと考えている。

令和4年4月22日
(株)中條金物
中條克俊